昨日の朝方は、出窓のところで横になっているポコを撫でると、喉をゴロゴロ鳴らした。
それを見て少しほっとした。
ポコは思い出したように起き上がり、座った。
頭を撫でると、かろうじて出た甲高い声で鳴いた。
コップに水を入れて与えると、ゆっくりと何度かに分けて水を舐めていた。
昼頃、ポコの様子を見に行くと、餌と水の前で横になっていた。
水を飲もうとして倒れかけたのか、床が水で濡れていた。
目を開いて息はしているが、どこ見ているのかわからないような状態だった。
今にも降り出しそうな曇り空で、部屋の中は割と涼しかった。
夕方になってポコは、普段あまり行かない部屋の隅に行こうとしていた。
舌を出して呼吸も辛そうだった。
念のために体や口のまわりに水をつけてあげた。
ポコは体力の低下でここ半年くらい、まともに自分で毛づくろいもしてない。
少しでも体温調整に役立てばと思ったのだが、良くなる気配はなかった。
以前も同じような状況になったことがあるが、1時間後くらいには回復していた。
ポコは初めてオシッコを漏らしてしまった。
「いよいよポコが死ぬかもしれない。最後はそばで看取ってやりたい」
そう思って覚悟をきめた。
いつも抱っこを嫌がるけれど、私は自分の胸の上にポコを寝かせた。
ポコは息苦しそうに何度か大きく口を開けた。
そして目と口を開いたまま、動かなくなった。
呼吸も完全に停止して、身体中の力が抜けきってしまったようだ。
まだ体が温かいので、死んでしまったことが嘘のように思えた。
今も走馬灯のように、ポコとの19年間の思い出が蘇る。
「あの時、もっとこうしてあげれば」とか、
「最後は胸の上に寝かせないでそっとしておけば、もしかしたら…」とか、色々と後悔もしている。
これまでの自分の人生で、最も仲のよい存在が消えてしまった。
「あれ? ポコ何処行ったんだろう」
「なんだ、そこに居たのか」
そんな日々が幸せだった。
ポッカリと胸に穴が開いてしまって何も手につかない。
何も見たくないし、何も聞きたくない。
今となっては床に落ちてるポコの毛ですら愛おしい。
こうして文を書いたり、絵を描く準備をしていないと、また涙が止まらなくなる。
3年ぶりに絵を描こうとしているが、ポコだから描きたいと思うし、今はポコ以外描きたくない。
ポコがまだ元気に走り回っている頃、そんな姿を見て嬉しい反面、今日という日を想像もしていた。
その時が来たら出来る限り気持ちを切り替えよう、とも考えた。
そんな事ができるはずもないのに。
ポコが逝って24時間が過ぎた。
そうして1週間が過ぎ、1年が過ぎ、10年が過ぎていくのだろう。