LOLITA

※ちなみに私はロリコンではありません

 

20代の頃に観たときは主人公が滑稽で愚かな中年男という印象だけが強かった映画だが、今回久々に観てかなり違った印象を得た。

原作のロリータをそのまま娯楽映画に転換する際の倫理的問題を度外視したとしても、キューブリックにとって少女の年齢や性描写は大して重要ではなかったのだと思える。
寧ろ性描写を排除することで、より心の問題に接近することが出来る。
キューブリックが表現したかったのは「偏愛」ではなく、「恋」という幻想の正体だったのではないだろうか。
「恋」とは瞬間的な幻想であり、決して手に入らない非現実的で実態のないもの。

男性が女性との関わりで得る生得的な性欲と「恋」という心の現象は別ものだ。
恋をした男性の実像はそんなにスマートなものではない。
恋の幻想にとらわれたときから思い込みや執着が始まる。
恋の幻想はどのような瞬間に得られるのだろうか。
例えば、片思いのクラスメートを遠くから眺めているだけでは得られない。
好きな女に対してストーカー行為を繰り返したところで得られるものでもない。
(ストーキングの経験は無いので憶測だが)

とてつもなく美しく、手に入れようとすれば自らが崩壊してしまいかねない危険な幻想が恋の正体であり、そのような恋の幻想の正体を見事に一曲の音楽で表現しきったのがキューブリックの「ロリータ」なのではないかと思う。

ロリータ [Blu-ray]

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リプルション ~反撥~

反撥と峰不二子

今から5年前に、雑誌『GQ』1995年8月号155頁をもとに、ロマン・ポランスキー監督映画『反撥』のカトリーヌ・ドヌーブをキャンバスに描いた。
154〜155頁にかけてロマン・ポランスキー映画における”密室”について書かれた記事なのだが、大して記事の内容も読まず、縦4cm×横7cmの小さな写真に目が釘付けになり、拡大してみたくなったのだ。
それだけの動機である。実は映画も観たことが無かった。
写真が小さいので、そこがどの様な空間なのかも想像し辛く、どのような状況で彼女が受話器を握っているのか、電話の相手が誰なのかも分からない。
何も分からないから、分からないうちに描いてしまいたかったのだ。

そして5年経った昨日の朝、初めて『反撥』を観ることができた。
想像していたよりも広いアパートだった。
乾涸びた芋のような自分にとっては、あの精神崩壊は一服の清涼剤のようでもあった。
だが自分は、超えられない女性性を前にして傍観者以上にはなれない。

話しは変わるが最近、『ルパン三世(TV第1シリーズ)』所謂「旧ルパン」、あるいは「ファースト・ルパン」、または「緑ジャケット」を観た。
1971年10月24日放映開始から40年ということで、千葉では「ルパン三世展」も行われている。
むかしからルパンは緑ジャケットのTV第1シリーズが一番好きだ(というか他はほとんど見てない)。
『ルパン三世(TV第1シリーズ)』の峰不二子をキャラクターデザインする段階で、『反撥』のカトリーヌ・ドヌーブをモデルにしたのではないだろうかと勝手に想像してみたりもする。
そうすると第9話「殺し屋はブルースを歌う」でトライアンフを運転する不二子と、『反撥』の中でトライアンフの助手席に座るキャロル(カトリーヌ・ドヌーブ)が重なる。

密室の中で崩壊していったキャロルが峰不二子として生まれ変わり、男を手玉に取り、車や飛行機を乗り回し世界中を飛び回る。

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キャンバス/アクリル(32cm×41cm)

 

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キャンバス/アクリル(26cm×37cm) 第4話「脱獄のチャンスは一度」より作製

ミラル

最近日本でも中国や韓国との領土問題が連日メディアで取り上げられる中、本気で「戦争しよう」と声を上げる人間がいることに驚かされる。
平和が続くと人間は戦争の悲惨さを忘れてしまう。
悲惨な戦争を忘れず、二度と繰り返してはいけないことを私たちは訴え続けなければいけない。

今日は借りてきたDVD『ミラル』を観た。
『ミラル』はイスラエル占領下のパレスチナで成長してゆく少女の、自伝的実話である。
監督はユダヤ系アメリカ人現代アーティストのジュリアン・シュナーベル。
そう。ユダヤ系であるシュナーベルがこの実話を映像化したということに、平和への強いメッセージ性がある。

是非、多くの人に観て欲しいと思う。

ミラル [DVD]

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  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
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『ビフォア・サンセット』続編

リンクレイター監督、イーサン・ホーク&ジュリー・デルピー主演の映画『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)』『ビフォア・サンセット』の続編が今夏クランクインするそうだ。
前作からまた9年経ったタイミングでの撮影とのことで、再び等身大の2人に会うことができる。
前2作はレンタルDVDで観たのだが、今回は劇場で観れればと思う。

ビフォア・サンライズ 恋人までの距離 [DVD]

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ビフォア・サンセット [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
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SRARTACUS

初めてスタンリー・キューブリックの映画を観たのは高校生の時だった。

当時はバンドでギターを弾いていた。
尊敬するギタリストはジミ・ヘンドリックスとジミー・ペイジとロバート・フリップだった。
最も好きなバンドはLED ZEPPELINだった。

そんなある日バンドのメンバーに「『LED ZEPPLIN/狂熱のライヴ』が映画館で上映されるから観に行こう」と誘われた。
その時2本立てで上映されていたのが『時計仕掛けのオレンジ』だった。

それ以来、キューブリック映画の大ファンである。
…といっても全ての作品を観たわけではない。
1950年代の作品は『突撃』しか観ていないし、『スパルタカス』も今回初めて観た。
それ以降の作品はすべて観ている。

キューブリック監督作品は、ふとしたときに観たくなる。
ついこの間も無性に観たくなってレンタルしに行ったのだが、目当ての作品が何処にも見つからず、ついには 『博士の異常な愛情』と『ロリータ』はありますか? と店員に尋ねる始末。
学生アルバイト風の店員に「すいません。当店では取扱いがございません」と冷たくあしらわれた。
(…おいおい、ここはキューブリックも揃ってないのかよ)と思ったが…待てよ?
もしかして俺は変態と思われたのか?(あながち間違いでもないが…)

それはさておき『スパルタカス』は初めて観たわけだが、今日という日に観て良かった。
…というか何というか、(個人的に)今日観るべき映画だった。

『トランスフォーマー/ダークサイドムーン』と比べるのもまったくもってアレだが、あえてどっちが好きかと聞かれたら『スパルタカス』の方が好きだと言える。(そんな自分が好きだ)

スパルタカス 【Blu-ray ベスト・ライブラリー100】

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A.I. [ARTIFICIAL INTELLIGENCE]

私は何度か、ロボットが整然と並ぶ映像を幻視したことがある。
その所為か、ロボット(人工知能)が身近な存在として人間社会に貢献する未来を、あまり違和感なく受け入れることが出来る。
(ただ、私の幻視したロボットたちは、人間のような皮膚や顔はなく、無機質で冷ややかな存在ではあったが…)
それはさておき、

キューブリックは早くから、人工知能の可能性をテーマにした映画の構想を膨らませていたが、その構想を映像化させる上で、もっとも適した監督はスピルバーグであると語っていた。
「自分が撮ると哲学的な映画になってしまうが、この映画は広く受け入れられる必要がある。その点、スピルバーグは適任だ」

キューブリックにとって重要な案件でもあったこの映画を完成させるにあたって、彼自身の主体を脱中心化させることで社会的責任を果たそうとした、とも考えられる。

それはスピルバーグについてもいえる事だろう。
キューブリックの絶大なる信頼のもと、それゆえに期待される自身の能力と、キューブリックの偉大な才能との間のパラドックス上で、彼自身、脱中心化される瞬間があったはずだ。

そういった意味においてこの作品は、映画界に多大な功績を残した二人の巨匠の脱中心化されたスピリット、という重層的構造を持っている点で興味深い。

「広く受け入れられる」という点においては、実際には賛否両論ではあるようだが、個人的にはチャレンジング・スピリットが感じられる、好きな作品である。

キューブリックが生きていたら、こう言うだろうか。
”S・キューブリックに捧ぐ”という文字が余計だ」

さて私達ひとり一人は、未来をクリエイトする必要性と責任があることについて考えさせられる。

A.I. [Blu-ray]

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Der Baader Meinhof Komplex

『おくりびと』が第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した2008年、本作『バーダー・マインホフ 理想の果てに』もドイツ代表作としてノミネートされていた。
(同年、イスラエルのアニメ映画『戦場でワルツを』とポーランド映画『カティンの森』も外国語映画賞にノミネートされている。この4作に共通するテーマは”死”である。
 中でも受賞に至らなかった3作の、史実である”死”は壮烈かつ挑戦的で、生涯記憶に残るだろう)

『バーダー・マインホフ 理想の果てに』は1970年代の、ドイツ赤軍10年間の闘争史を再現した映画であるが、現代の若者にも伝わりやすく、アクション満載で制作費に30億円投入されている大作だ。
史実に忠実に再現されているが分析的要素は排除され、判断は観客に委ねられるつくりとなっている。

私がドイツ赤軍(とくにウルリケ・マインホフ)について知るきっかけとなったのは、ドイツ現代画家ゲルハルト・リヒターの絵画である。
リヒターの絵画の中でもとりわけ重要な連作『1977年10月18日』(1988年発表)には、テロリストたちの”独房”と”死”がモノクロームで描かれてある。
(私はその絵を写真でしか見たことないのだが、ある種の精神状態において、視覚的に不思議な体験と、味わったことのない感情を覚え、芸術の本質を見たような気がした。
 比較的小さな作品で構成されている連作とのことだが、原画はおそらくもっと強烈だろう)
リヒター自身は共産主義者ではないし、イデオロギーに拒絶的だ(私もそうだが)。
連作についてリヒターは、「(左も含めた)イデオロギー的態度全般の犠牲者である彼らへの哀悼」「ドイツ赤軍事件を風化させずに、新たな意味を模索する芸術的試み」であることに言及している。
(連作を取り組むにあたっては、映画『バーダー・マインホフ 理想の果てに』の原作者シュテファン・アウストの著書(同タイトル)を参考にしたとのことだ)

そして、インタビューの中でリヒターはこう答える。

(あなたにとってドイツ赤軍とは、なによりも女性の行動ですね)

「そのとうりです。そこでは、女性たちが重要な役割を果たしたとも考えていますし、彼女たちは、男たちよりもずっと強い印象を私にあたえました」 (写真論/絵画論より)
  

バーダー・マインホフ 理想の果てに [DVD]

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  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
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Eyes Wide Shut

キューブリックが映画の中で音楽を効果的に使用するのは定評がある。
『アイズ・ワイド・シャット』ではリゲティやショスタコーヴィチなどの曲が使用されているが、特にトムクルーズ演じるビルが何者かに尾行されているシーンで使われる、リゲティの『ムジカ・リチェルカータ』は不気味な緊張感を演出していて印象的だ。

『時計じかけのオレンジ』でのベートーベン『第9』も、とても印象深いものがあった。
薄気味悪い裸婦の絵と蛇。常識外れな4体のキリスト像…
その後に繋がる、アレックスがパンツ一丁で尻をボリボリかきながら廊下を歩くところも私の好きなシーンのひとつだ。
うまく表現できないが、70年代的輝きが潜在意識と交差する瞬間がある。

『アイズ・ワイド・シャット』の中で、尾行されているビルが隠れるようにカフェに入ると、モーツァルトのレクイエム『みいつの大王』が聞こえてくるシーンがあるのだが、なぜか私はその曲に、キューブリックらしい独特な輝きを感じた。

(レクイエムを選曲した意図として読み取れるのは、”生と死”の対比、”権力と弱者”の対比である。
それはビルの持っている新聞の文字からも読み取れる)

クリスマス時期の店内BGMがたまたまレクイエム『みいつの大王』という設定であり、特別印象的でもないのだが、ぼんやりと私の中だけで、キューブリック映画作品にみられる一貫した問題提起をも思い起こさせた。
それは人間の本質的”危うさ”、すなわち”弱さ”であり、ときに人間は自己崩壊に捕われる。
キューブリックはその問題を様式化して表現したり、ユーモラスに提示したりすることで、社会的責任のみならず、自らの好奇心さえも満たしたのだろう。

ギリシャ神話『イカロスの翼』を引き合いに出し、キューブリックはこう述べる。

(父は息子のイカロスに高く飛びすぎないよう忠告する。
高く飛びすぎると太陽の熱で羽のロウが溶け、翼を失ってしまうからだ。
だがイカロスはその忠告を無視して高いところまで飛び、翼を失い、海に落ちる。
物語の一般的な教訓は「高く飛びすぎないこと」である)

「だが、こうも考えられる。”ロウと羽を捨て、いい翼を作れ”と」

 

アイズ ワイド シャット [Blu-ray]

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The Shining


All work and no play makes Jack a dull boy
work and no play makes Jack a dull boy0000
and no play makes Jack a dull boy00000
no play makes Jack a dull boy000000
play makes Jack a dull boy0000000
makes Jack a dull boy00000000
Jack a dull boy000000000
a dull boy0000000000
dull boy00000000000
boy0000000000




All work and no play makes Jack a dull boy
work and no play makes Jack a dull boy0000
and no play makes Jack a dull boy00000
no play makes Jack a dull boy000000
play makes Jack a dull boy0000000
makes Jack a dull boy00000000
Jack a dull boy000000000
a dull boy0000000000
dull boy00000000000
boy0000000000




All work and no play makes Jack a dull boy
work and no play makes Jack a dull boy0000
and no play makes Jack a dull boy00000
no play makes Jack a dull boy000000
play makes Jack a dull boy0000000





増殖する狂気の無限ループ

シャイニング [Blu-ray]

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2001年宇宙の旅

インセプション繋がりで、10年ぶりくらいにキューブリックの『2001年宇宙の旅』を観た。
(思い出した。この前に観たのは2001年。東京から大阪へ向かう新幹線の中だった。
 ノートパソコンを使って観たのだ。『2001年東海道の旅』)

今でも最も好きな映画であり、もっとも美しい芸術作品だと思っている。
1968年に公開された映画だが、まったく遜色がなく、更に輝きを増しているのが驚かされる。

ところで『2001年..』のBDは特典映像も充実していて、音声解説も付いている。

デイブとフランク、2人の宇宙飛行士の、船内での”孤独”な日常シーンの中に、フランクがコンピューターのハルにチェスでチェックメイトされるシーンがあるのだが、その中で、デイブ役のキア・デュリアが、「後日談だが、あるチェスの達人が、シーン中の駒の動きにミスがあることを指摘した。
キューブリックはチェスにかけては、金を稼いでいたほどの名人だ。(そんなミスを犯す訳がない)
キューブリックはわざと駒の動きを間違えたのだろうか? 真相は謎だ」と語っていた。

この点については単純に、ハルが既に誤作動を起こし始めている事を示唆している、あるいは、ハルがわざと駒の動きを間違え、フランクが気付くかどうか試した、などというストーリー上の設定と考えるのが自然だろう。
(もしも本当に駒の動きにミスがあるのであれば)

ほとんど誰も気付かないようなマニアックなアイディアが、この映画には随所に散りばめられてあるようだ。
だが、決して説明的ではない。
そんな極自然なリアリティが普遍的でもある。

2001年宇宙の旅 [Blu-ray]

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